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第52話 監獄街 ~ソフィアサイド~

作者: 光命
last update 最終更新日: 2025-04-28 19:59:00

鬱屈とした雰囲気が街を覆っておるのぅ。

なんじゃろうな、この居心地の良さは……

たぶんワシらの仲間に近しいやつらが何かしていそうな気がするのぅ。

街についたとたんに感じる雰囲気が人の街ではないように感じた。

明らかに人ではない何かが支配しているのぅ。

もしくは関係しているか……

あやつは馬鹿正直に調査調査と言うが、この感じだけでもわかるじゃろうに……

ホントに感が悪いのぅ。

「なぁ、おぬし。

 この雰囲気、感覚からして調査せずともわかるじゃろ。

 人が作り出したものと違うぞ」

街中の様子を探っているあやつに、ワシが感じたことを伝える。

「そうなのか?

 マリーが聞いた人は税が高いっていっていたから、悪徳領主が何かしらしているんじゃないの?」

あやつからは能天気な答えしか返ってこなかった。

「それもそれであるじゃろうがのぅ……

 それだけではこんなことにはならないとは思うのじゃ」

「ゾルダの言うこともわかったから。

 とりあえずはまだ街の中の様子を伺っていこうよ」

あやつはすごく慎重にことを進めることが多い。

そんなに慎重に進めても事は進んでいかなと思うのじゃがのぅ。

「……勝手にせい」

半ば投げやりにあやつの進め方を容認する。

あやつに付いて街の至る所に行ってみたが、どこも人はまばらじゃった。

男の人の数は少なくそれも爺さんばかり。

逆に女や子供が多かった。

店や宿屋も女が切り盛りしている様子じゃった。

「なんかすごく男の人が少ないな」

「そうだねー。

 それに活気もなくて、報告と全然違うねー」

小娘の娘も話の違いに戸惑っている様子じゃ。

確かに、聞いていた話とは大きく違うのぅ。

もっと栄えて活気があってというのが、街に出入りしている一部の人の話じゃったと……

でももしかしたら、それが全部偽りということもあり得るのぅ。

この感じからすると。

「こうなると、聞いていた話が嘘じゃったということではないのかのぅ。

 一部しか出入りしておらんということは、そやつらも結託しておるということじゃ」

「そうなのかな。

 アルゲオが出ていたことも関係しているかもしれないよ。

 男の人は討伐に向かったとか」

またあやつは呑気な考えをしておるのぅ。

「ゾルダの言うことも考えとしてはあるんじゃないかなー

 中を見ている人が少ないってことは。

 結託しているかどうかはわからないけど、口止
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